スウェーデンの夏至祭「ミッドサマー」とは?伝統料理や祝い方をまとめて解説
スウェーデンの夏至祭「ミッドサマー」は、スウェーデンの人々にとって特別な伝統行事です。1年でもっとも日照時間が長い夏至の時期に行われ、家族や友人が集まって屋外で伝統的な食事やダンスを楽しみます。この記事では、スウェーデンのミッドサマー(Midsommar)の歴史や祝い方、食文化などを詳しく解説します。
スウェーデンの「ミッドサマー」とは?
「ミッドサマー(Midsommar)」は、スウェーデンで毎年6月の夏至の時期に行われる伝統的な夏至祭です。スウェーデンではクリスマスと並ぶ重要な祝祭で、多くの人々が家族や友人とともに夏の訪れを祝います。日照時間が長く、夜まで明るい白夜の時期に行われるため、開放的で華やかな雰囲気に包まれます。
「ミッドサマー(夏至祭)」は、必ずしも6月21日の夏至の日に行われるわけではありません。多くの場合、6月19日から25日の間の金曜日に「ミッドサマーズイブ」(Midsommarafton)が祝われ、その翌日の土曜日が「ミッドサマーデー」(Midsommardagen)夏至祭当日となります。「夏至祭」の日は年によって変動します。
ミッドサマーの起源は?
スウェーデンの「ミッドサマー(夏至祭)」の起源は、古代スカンジナビアの太陽崇拝に遡ります。夏至は一年でもっとも昼の時間が長い日であり、太陽の力ももっとも強まると考えられていました。また、夏至は収穫の始まりを意味し、太陽の恵みに感謝を捧げる重要な日でもありました。
スウェーデンにキリスト教が広まった後、ミッドサマーは聖ヨハネの日(6月24日)と結びつき、キリスト教的な要素も加わりました。ただし、現代のスウェーデンでは、「ミッドサマー(夏至祭)」は宗教的な意味合いよりも、夏の到来を祝い、自然を楽しむ、家族や友人との絆を深めるためのイベントとしての側面が強くなっています。
ミッドサマーの伝統的な祝い方
「ミッドサマー(夏至祭)」には、スウェーデン独自の伝統的な習慣が多く見られます。もっとも象徴的なのは、花や緑で美しく飾り付けられた「メイポール(Midsommarstång)」(ミッドサマーポールとも呼ばれる)を立てる儀式です。メイポールは、豊穣、生命力、そして自然の再生を象徴するミッドサマーの中心的なシンボルです。地域によって異なる形状や装飾が施されます。

Photo by Mikael Kristenson
お祭りでは、伝統的な民族音楽に合わせて、メイポールの周りを手をつないで円を描きながら踊ります。ダンスは地域によってさまざまありますが、なかでも「カエルの踊り」は、子供から大人まで楽しめる伝統的な踊りとして知られています。
「ミッドサマー(夏至祭)」のもう一つの伝統は、ブロムステルクランス(Blomsterkrans)と呼ばれる花冠を作ることです。女性や子供たちが、野に咲く花々を摘み集め、丁寧に編み込んで美しい花冠を作ります。花冠は、自然との調和や夏の美しさを象徴しており、「ミッドサマー(夏至祭)」を祝う人々にとって欠かせない伝統の装飾品です。花冠の花の種類はさまざまで、地域や個人の好みによって異なりますが、キンポウゲ、ヒナギク、ヤグルマギクなどがよく使われます。
旬の食材を味わうミッドサマーの伝統料理
「ミッドサマー(夏至祭)」の食卓もお祭りの楽しみの一つです。屋外のテーブルは、スウェーデンの夏の恵みを存分に味わえる色鮮やかな料理で彩られます。特に欠かせないのが「ニシンの酢漬け(Sill)」です。マスタード、ディル、タマネギなど、さまざまな風味の酢漬けがあります。
新じゃがやサワークリーム、チャイブと呼ばれるハーブなどとともに味わうのが定番です。新じゃがは、ミッドサマーの時期に収穫される最初のもので、とてもフレッシュです。皮が薄く、甘みがあり、みずみずしいのが特徴です。
ニシンの酢漬けのほかにも、スモークサーモンやミートボールなど、スウェーデンの定番料理もミッドサマーの食卓を彩ります。これらの料理には、ディルなどのフレッシュなハーブが添えられます。また、スウェーデンの伝統料理「ヤンソンさんの誘惑」と呼ばれる、アンチョビ、ジャガイモ、玉ねぎをグラタンにした料理もよく登場します。

Photo by Davide Biscuso
デザートには、夏の味覚を代表するストロベリーケーキが欠かせません。新鮮なスウェーデン産のイチゴをたっぷりと使い、ふわふわのスポンジケーキと濃厚な生クリームを重ねたシンプルなケーキは、子供も大人も大好きです。
そして、アクアヴィット(Akvavit)と呼ばれるお酒も必須です。アクアヴィットは、主にスカンジナビア諸国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)で生産される蒸留酒です。主な原料はジャガイモまたは穀物で、ディルやキャラウェイなどのハーブやスパイスで風味付けされています。
「ミッドサマー(夏至祭)」の宴では、アクアヴィットは伝統的な歌(Snapsvisor)を歌いながら乾杯する際に飲まれます。アルコール度数は40%前後と高いので、飲みすぎには注意です。
あの映画とシンクロ?ミッドサマーの迷信や占いがある⁉
スウェーデンの「ミッドサマー(夏至祭)」には、古くから迷信や占いの風習が伝えられており、特に若い女性たちの間で人気を集めています。その中でも一番有名なのが、「7種類または9種類の異なる花を摘み、枕の下に置いて眠ると、未来の結婚相手が夢に現れる」という言い伝えです。
この風習は、単にロマンチックな願いというだけでなく、夏の短い間に咲き誇る花々の生命力と、未来への希望を結びつけるものと考えられています。花を摘む際には、それぞれに願いを込め、静かに、そして誰にも気づかれないように行うことが重要だとされています。
また、ミッドサマーの夜は、普段とは異なる世界との境界線が薄くなると信じられており、自然界の精霊や妖精(Väsen)たちが現れやすいと言われています。そのため、夜に草原や森を一人で歩くと、精霊たちの囁きや、普段は聞こえない自然の声を聞くことができるとか。ただし、精霊たちは気まぐれで、人間にいたずらをすることもあるため、注意が必要だとも伝えられています。
「ミッドサマー(夏至祭)」をモチーフにした大ヒット映画『ミッドサマー』は、これらの伝承や風習が参考にされているそうですが、映画の内容はあくまでフィクションで、スウェーデンの「ミッドサマー(夏至祭)」は家族や友人と自然の中で過ごし、夏の到来を祝う、楽しいお祭りです。
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スウェーデンのミッドサマー、現地での楽しみ方&旅行者向け情報
スウェーデンを訪れる観光客にとって、「ミッドサマー(夏至祭)」は現地の文化に触れ、忘れられない思い出を作る絶好の機会です。この時期は、ストックホルムの「スカンセン博物館」をはじめ、各地の博物館や公園などで、観光客向けのミッドサマーイベントが開催されます。イベントでは、メイポールの立て方や伝統的なダンスの踊り方、花冠の作り方などを体験できるワークショップや、音楽やダンスのパフォーマンスを楽しめます。
より本格的な「ミッドサマー(夏至祭)」を体験したい方は、スウェーデンの田舎や湖畔の地域へ足を運んでみるのも良いかもしれまん。例えば、ダーラナ地方は、伝統的な衣装を身につけた人々が集まり、大規模なミッドサマー祭りが開催されることで有名です。ダーラナ地方は、首都ストックホルムから電車で3~4時間ほど。ストックホルムから少し足を延ばして、1泊2日で楽しんでみては?
ミッドサマー期間にスウェーデンを旅行をするときの注意点
ミッドサマー期間中に旅行する際の注意点として、事前に宿泊施設や交通手段を予約しておくことが重要です。特に人気の観光地やイベント会場周辺の宿泊施設はすぐに埋まってしまうため、早めの予約をおすすめします。また、ミッドサマー当日は多くのショップやレストランが休業するため、食料や飲み物などは事前に購入しておくと良いでしょう。
さらに、屋外で長時間過ごすことを考慮し、動きやすく温度調節しやすい服装を選びましょう。夜は気温がぐっと下がることもあるので、上着も忘れずに。場所によっては、蚊などの虫が発生するため、虫除けスプレーなどの対策グッズがあると便利です。
現地のイベント情報や交通機関の運行状況などは、スウェーデンの観光情報公式サイト(https://www.visitsweden.com/)などで確認できます。事前にしっかりと準備をしておくことで、ミッドサマー期間中のスウェーデン旅行をより快適に楽しむことができますよ♪