北欧最大のプライドパレード「ストックホルム プライド」がオンライン開催、ヴィクトリア皇太子がスピーチ
スウェーデンの首都ストックホルムで毎年夏に開催されるプライド・パレード「ストックホルム プライド(Stockholm Pride)」。今年は、新型コロナウイルスの影響により期間を短縮し、初のオンラインイベントとして開催されました。
プライド・パレードは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の文化を讃え、それに賛同する人たちが集うパレードのこと。1970年代にアメリカで始まり、現在は世界各地に広がっています。
「ストックホルム プライド」は北欧最大のプライド・パレードで、毎年4~6万人がパレードに参列する他、50万人以上の支持者やLGBTコミュニティーの人々が沿道に訪れ、期間中に開催されるイベントに参加。多くの企業がスポンサーとなり、同イベントをサポートしています。
「ストックホルム プライド」のイベントは通常1週間行われ、パレードの他にも、著名人によるトークセッション、文化セミナー、展覧会、映画上映、コンサート、ワークショップなど、さまざまなアクティビティが開催されます。また、市内の一部のレストランやバー、カフェでは、特別メニューの提供やディスカウントサービスなどが行われるため、市全体が祝祭ムードに包まれます。
今年のパレードは残念ながら中止となりましたが、8月1日にはスウェーデンのヴィクトリア皇太子(Kronprinsessan Victoria)がオンラインスピーチを行いました。ヴィクトリア皇太子は、世界で初めてLGBT運動にコミットした王室メンバーとしても知られています。
スピーチでは、「プライド・パレードは単なる夏のイベントではなく、人権について考える機会を与えてくれるものです。北欧諸国はセクシュアル・マイノリティの権利に関して先進的ではありますが、世界にはまだ多くの人々が偏見と無知によってアイデンティティを否定されている現状があります。もし、あなたが自分自身についてオープンにできない状況にあるならば、このことを忘れないでください。『あなたは、あなたが“誰であるか”を正確に知る権利があり、あなたの後ろには多くの支持者がいるということを』」と述べています。
ヴィクトリア皇太子のスピーチの通り、北欧、とりわけスウェーデンでのセクシュアル・マイノリティの権利は、世界でもっとも先進的とみなされています。スウェーデンでは、1944年に同性愛が合法化されて以来、世界初のジェンダー変更の合法化(1972年)、同性カップルの養子縁組制度(2003年)、性的指向に基づく差別の禁止(2011年)などが誕生し、政府が率先してセクシュアル・マイノリティの権利を向上させる土壌をつくって来ました。
日常生活では、「彼」でも「彼女」でもない中立の代名詞「Hen」が一般的に使用されており、公共施設のトイレではすべてのジェンダーが利用可能とされている場合がほとんど。また、街では同性カップルと養子縁組された子供の姿を多く見かけますが、そこに偏見の眼差しはありません。
なお、ストックホルムでは11月26日から29日まで、「ストックホルム ウィンター プライド(Stockholm Winter Pride)」と題した初の冬季プライド・イベントが行われる予定。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、市を挙げてのビッグイベントになりそうです。