北欧在住者がおすすめする、今こそ読みたい北欧ミステリー小説7選
北欧小説と言えば、やっぱりミステリー。日本のミステリーとも、欧米のミステリーとも一線を画す、独特のダークな世界観と、なんとも言えない読後感にハマる方も多いのではないでしょうか。一方で、北欧ミステリーや北欧小説の世界に興味はあるけれど、何から読めばいいかわからないという人も多いと思います。
そこで、この記事では、北欧ミステリー初心者にも読みやすい作品から、コアなファンも唸る傑作まで、私たち編集部の独断と偏見で7本(電子版小説)をピックアップ。今こそ読みたいおすすめの北欧ミステリーです。
From DENMARK
『特捜部Q―檻の中の女―』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
ユッシ・エーズラ・オールスン著
捜査への情熱をすっかり失っていた刑事カール・マークは、未解決事件を捜査する新設部署「特捜部Q」への異動を命じられた。オフィスは窓もない地下室、部下は怪しげなシリア人のアサドのみ。手始めに、自殺として処理されていた女性議員失踪事件の再捜査に着手したところ、次々に衝撃の新事実が明らかになり―。
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【編集部コメント】
世界40か国以上で刊行され、映画化もされたデンマークの警察小説「特捜部Q」シリーズ。暗くシリアスな展開が続く中、主人公カールと部下アサドの“ちょっと笑える”やり取りが適所に織り込まれ、一気に読めてしまいます。
From ISLAND
『湿地』(創元推理文庫)
アルナルデュル・インドリダソン著
首都レイキャヴィクの湿地にある建物の地下で、老人の遺体が発見された。金品が盗まれた形跡はなく、何者かが突発的に殺害し、逃走したものと思われた。しかし、現場に残された謎のメッセージによって、被害者の隠された過去が明らかに。臓腑をえぐる真相。なぜ被害者は殺されなければならかったのか―。
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【編集部コメント】
北欧5か国のもっとも優れた推理小説に贈られる「ガラスの鍵賞」受賞作品。淡々と綴られるストーリーですが、後半になると面白味が増していきます。北欧の中でもちょっぴりミステリアスなアイスランドの風土を知るチャンス。
From SWEDEN
『ボーダー 二つの世界』(ハヤカワ文庫NV)
ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト著
人の不安や嘘を嗅ぎ取ることができるティーナは、その能力を活かして不法入国や密輸を取り締まる税関職員として働いていた。ある日、ティーナの前に昆虫孵化器を持った不思議な男が現れる。明らかに隠し事をしている男に不信感を抱きながらも、どこか自分と同じ匂いを感じ、惹かれていく。男にはティーナの出生に関わる大きな秘密があった―。表題作の他、現実と異界の境界を問う11の短編集。
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【編集部コメント】
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者として知られるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。今作『ボーダー』も2018年に映画化され、第71回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でグランプリを獲得。ダークファンタジーやホラーが好きな方におすすめ。
From SWEDEN
『砂男』(扶桑社BOOKSミステリー)
ラーシュ・ケプレル著
吹雪の夜、ストックホルムの郊外で、13年前に行方不明になったミカエルが保護された。ミカエルは、自分と妹を誘拐した人物を「砂男」と告げる。国家警察のヨーナ警部は、以前自身が逮捕したシリアルキラー・ユレックの共犯者が「砂男」だと睨み、ユレックが隔離されている閉鎖病棟へ、潜入捜査員として女性警部サーガを送り込む。果たして「砂男」は本当に存在するのか。サーガは謎を解き明かし、閉鎖病棟から無事に戻れるのか―。
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【編集部コメント】
スウェーデンで年間もっとも売れたクライムノベル。ヨーナ・リンナ警部シリーズの第4作目ですが、単独でも楽しめます。映画『ハンニバル』シリーズのレクター博士を思わせるシリアルキラー・ユレック。その不気味さにゾクゾクしながら、テンポよく読める一冊です。
From SWEDEN
『許されざる者』(創元推理文庫)
レイフ・GW・ペーション著
国家犯罪捜査局の元長官ラーシュは、脳梗塞で倒れ、一命は取り留めたものの、右半身に麻痺が残る。そんな彼に主治医の女性が相談をもちかける。牧師だった父が、25年前に起きた未解決事件の犯人について“懺悔”で聞いていたというのだ。事件はすでに時効になっていたが、ラーシュは相棒だった元捜査官や介護士の助けを借りて事件を再捜査。犯人を見つけ出し、報いを受けさせることはできるのか―。
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【編集部コメント】
時効になった事件の犯人をどう裁くのか。そのテーマが雫井脩介さんの『検察側の罪人』に少し似ているな~と手に取った作品でした。結末は読んでいただくとして、元犯罪学者&国家警察委員会顧問である作者の緻密な捜査描写は読みごたえがあります。
From SWEDEN
刑事ヴァランダー・シリーズ『殺人者の顔』(東京創元社)
ヘニング・マンケル著
雪の予感がする1月8日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。夫は死亡、虫の息だった妻も「外国の…」と言い残して息を引き取る。村の片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事と人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ……?
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【編集部コメント】
スウェーデンを代表する作家、故ヘニング・マンケルの名作「刑事ヴァランダー」シリーズの第1作目。マンケルの作品は、単なる謎解きにとどまらず、移民問題や人種差別、貧困、高齢化社会といった現代社会の重要な課題を鋭く描いています。彼は社会派ミステリーというジャンルを確立し、北欧ミステリーを世界に広めた立役者の一人。これから「刑事ヴァランダー」シリーズを読むなら、まずはこの1冊から。
From NORWAY
『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
サムエル・ビョルク著
首都オスロの山中で見つかった少女の首吊り遺体。少女の首には「一人旅をしています(アイム・トラベリング・アローン)」のタグが掛けられていた。猟奇的な殺人事件は、たちまち世間の注目を集めるようになる。何としても解決したい事件。警察の威信をかけた捜査に、ある事件によって解散させられていたオスロ警察の精鋭部隊・殺人捜査課特別班が再集結する。
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【編集部コメント】
登場人物が多く、覚えにくいのが難点ですが、ヒロインのミアをはじめとする殺人捜査課特別班のメンバーが魅力的に描かれいます。結末は、大どんでん返しとまではいきませんが、少し意外な展開に驚かされるかも。
北欧ミステリーは往々にして、陰鬱な雰囲気と過激なバイオレンス描写が特徴的ですが、北欧社会が抱える問題や世相が色濃く反映されていて、その世界観に魅了される人も多いはず。
連休や外出自粛中はじっくりと読書を楽しめる良いチャンス。この機会に北欧ミステリーの世界にどっぷりと浸かってみて!