北欧伝統のクリスマス行事「聖ルチア祭」、長く暗い冬に光があふれる一日

旧暦で冬至にあたる毎年12月13日、北欧5ヶ国(スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランド)と南欧の一部の国で、キリスト教の聖人ルチアの聖名祝日を祝う伝統行事「聖ルチア祭」が行われます。

聖ルチア祭

スウェーデンの聖ルチア祭/Photo:Rove.me

イタリアのシチリア島で殉職したとされる聖人ルチア。一説では、迫害され地下牢に隠れて暮らしていたキリスト教徒たちを密かに援助するため、頭の周りにロウソクを巻き、両手にたくさんの食料を抱えて、毎日のように地下牢を訪れていたといいます。

北欧諸国がかつてカトリック信仰だった頃、同時期に太陽の再来を願う冬至の祝祭「光の祭」が行われており、ルチアがラテン語で「光」を意味することから、二つの異なる背景を持つ祝祭が結びつき、今に伝わる「聖ルチア祭」が誕生したといわれています。

聖ルチア祭

スウェーデンの聖ルチア祭、中央がルチア役の少女

現在の「聖ルチア祭」は、18世紀後半にスウェーデンで始まったものが源流。大聖堂で行われる伝統的な祝祭では、コケモモのリースとキャンドルで作られた冠を頭に乗せ、白いドレスに赤い帯を巻いたルチアや精霊に扮した少女たちが、歌や行進を披露します。行進では、ルチア役となった少女の後を精霊役の少女たちが歩き、星型のスティックと三角帽子を被った少年たちがそれに続きます。

過去には、人々の投票によりルチア役の少女を一人選ぶ慣わしがありましたが、人気投票の様相を呈する時代遅れな慣習であるとの批判から、現在は多くの地域で廃止されています。ノルウェー・フィンランドを始めとする一部の国と地域では、くじ引きや順番でルチア役を決めるといったことも行われていますが、平等を重んじる現代の北欧諸国には馴染まない慣習の一つのようです。

Lussekatter

ルッセカット/Photo:oppskrift.no

そして、「聖ルチア祭」に欠かせない食べ物といえば、スウェーデン語で“ルチアの猫”を意味する柔らかいサフランパン「ルッセカット(lussekatt)」です。くるっとねじられたパンは、猫のしっぽに見えなくもないですね(笑)北欧では黄金色のサフランパンは幸運を呼ぶと信じられており、地方によっていくつかの異なる形があります。「ルッセカット」はスウェーデン発祥ですが、フィンランドやノルウェーでもこの時期に食べられる伝統的なパンです。

ちなみに、「聖ルチア祭」は学校や市民ホールなどで行われることも多く、音楽祭として一般公開されている場合もあります。クリスマスの時期に北欧を訪れる機会がありましたら、ぜひご覧になってみてください。

北欧の人々にとってクリスマスは家族と過ごす大切な時期。それぞれの国に伝わる伝統行事を、今後も随時ご紹介していきたいと思います。

THE STYLE OF NORTH 編集部

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