注目の北欧映画も上映、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が初のオンライン配信

2004年に埼玉県川口市で誕生した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と来場者や関係者の安全を考慮し、9月26日から10日4日まで、初めてオンラインで開催される。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020

本年度のプログラムは、例年より規模を縮小して、映画祭の核であるコンペティション部門のみを実施。同部門には、国際コンペティションと国内コンペティションがあり、長編作品を対象にした国際コンペティションには、106の国と地域から、計805作品の応募があったという。

国際コンペティションで選出された全10作品は、すべて日本初上映。本稿では、北欧からエントリーされた3作品を紹介する。

映画『カムバック』

Revansch/©Gustav Danielsson

カムバック/The Comeback(2020年/スウェーデン)
かつて将来を嘱望されたバドミントン選手だったアン=ブリット。しかし、1983年にスウェーデン選手権の決勝で敗れた瞬間から、彼女の人生が狂い始めた。敗戦が審判のミスジャッジによるものと確信している彼女にとって、35年が経った今でもその敗戦は忘れ難く、決して許すことのできないトラウマとなっていた――。

<POINT>
原題の「Revansch」からはシリアスな復讐ドラマが想像されるが、作品はスウェーデンらしいシニカルなコメディ。負け犬たちが人生の復活を目指し闘志を燃やす姿に、観客は笑い、涙させられるはず。

監督・脚本を手掛けたパトリック・エークルンド(Patrik Eklund)は、『Instead of Abracadabra』(2008)でアカデミー賞短編映画賞にノミネーションされた実力者。アン=ブリットを演じる主演のアンキ・ラーション(Anki Larsson)は、『ミッドサマー』(2019)にも出演した名バイプレーヤーで、本作では主演として体当たりの演技を見せている。

映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』

Photographer of War/©Good Company Pictures

戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録/Photographer of War(2019年/デンマーク、フィンランド)
戦場カメラマンのヤン・グラルップは、イラクで「イスラム国」制圧を進める軍と行動を共にし、世界中にその現状を伝えるために写真を撮り続けている。一方、コペンハーゲンの自宅に戻った彼は、4人の子育てに奮闘するシングルファーザー。常に命の危険と隣合わせのヤンに、“普通”の家庭を築くことはできるのか――。

<POINT>
デンマーク出身のヤン・グラルップ(Jan Grarup )は、ライフワークとなる戦場写真だけでなく、災害被災地での写真においても数多くの賞を受賞する世界的フォトジャーナリスト。本作は、撮影クルーがヤン・グラルップとともにイラクのモスルに赴き、戦地の現実を映像に収めた渾身の一作。

監督のボリス・B・ベアトラム(Boris B Bertram)は、これまでにも数多くの短編・TVドキュメンタリーを制作しており、本作は『Diplomacy』(2008)、『The War Campaign』(2013)に続く、国際紛争をテーマにしたドキュメンタリー3部作の最後の作品となる。

映画『願い』

Hope/©Manuel Claro

願い/Hope(2019年/ノルウェー、スウェーデン)
6人の子どもに囲まれて暮らすアンニャとトーマスの関係は、長い年月の中で互いに独立し、成熟したものとなっていた。そんな中、自身が振付けを担当したダンスツアーが成功を収めたアンニャは、クリスマス前日に末期の脳腫瘍との診断を受ける。二人は突然、それまで直視してこなかった“関係の脆さ”という現実に直面する――。

<POINT>
事実婚の夫婦が向き合う試練とその先にある希望を、監督のマリア・セーダル(Maria Sødahl)が自身の体験をもとに精緻に描いた本作。2019年のトロント国際映画祭、2020年のベルリン国際映画祭でも上映されるなど、各国で高い評価を受けている。

主演のアンドレア・ブライン・ホーヴィ(Andrea Bræin Hovig)は、女優として映画、TVで活躍する他、歌手としてアルバムもリリースするなど、多芸多才。そして、夫のトーマスを演じるのは、ヨーロッパのみならずハリウッド映画にも数多く出演する、スウェーデンを代表する名優ステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)。二人の名演だけでも必見に値する一作。

映画祭は、配信サイト「シネマディスカバリーズ」を通して、誰でも視聴することができる。視聴にはシネマディスカバリーズの会員登録(無料)が必要。チケットの料金は長編映画が1本300円、短編映画が1本100円、映画祭フリーパス(見放題プラン)が1,480円となっている。(いずれも税込価格)

また、海外作品においては、会期前半の9月26日から28日までの3日間、映画祭の公式YouTubeチャンネルにて毎日午前10時より、監督のインタビュー動画を配信。『カムバック』のパトリック・エークルンド、『願い』のマリア・セーダルら、7人の気鋭監督が語る制作背景や作品に込めたメッセージを、ぜひチェックしてほしい。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の詳細は公式サイトにて。

THE STYLE OF NORTH 編集部

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